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SEJだより 第56号

内閣総理大臣高市早苗様 原子力推進に関するお願い

掲載日:2026.01.25

拝啓

 高市総理はかねてよりエネルギ―安全保障の観点から、日本のエネルギ―自給率の引き上げが最優先課題であり、その実現のため原子力を戦略手段の中核として位置づけ、原子力発電の再評価と再稼働を推進し、福島事故以降十数年以上にわたり閉塞感が漂い停滞してきた原子力政策を大胆に転換すべきと明確に述べてこられました。このたびの維新との連立政権樹立合意書でも、エネルギ―政策として、「電力需要の増大を踏まえ安全確保を大前提に原子力発電の再稼働を進める。また、次世代革新炉及び核融合炉の開発を加速する」としています。

 われわれは新政権がこの考え方にそって政策の実現を図っていかれることを真に期待しています。原子力政策は革新炉、核融合炉、再処理、原子力潜水艦の開発など多岐にわたるものですが、ここでは現下の情勢にかんがみ現実の問題として早急に取り組むべき課題の加速につて意見を述べさせていただきます。

(1) 再稼働と建設中発電炉の推進について
 電力供給の安定化や化石燃料輸入の低減の観点から既設発電炉と建設中発電炉の早期稼働を図ることが求められます。現状は既設33基のうち再稼働中は14基です。稼働の加速のためには、①電気事業者の取組みを支援するため、事業者からの意見、要望をとりまとめ、国に求められる政策を実現すること。②原子力の安全規制は合理的判断に基づくものであるべきです。いたずらに審査期間を長びかせ、科学的論拠が不明確な規制は排除されなければなりません。規制委員会発足後の審査状況の経過と経験から被規制者の意見も踏まえ、原子力規制委員会設置法の見直しを含め必要に応じ原子力規制政策の是正に取り組むべき時に来ています。③再稼働は立地地元の理解と協力が鍵です。原子力への理解と安全性の確保については事業者の努力に加えて、国がそれぞれの所管の立場から地元説明に真剣に取り組んでいることが評価されるような活動を継続かつ反復して行うことが求められますが、現状の活動では不十分と言わざるを得ません。また原子力に対する国民理解を深める上で、総理大臣自らが自らの言葉で国民に向けて発信する機会を是非増やしていただきたいのです。

(2) 発電炉新増設への早急な取組み

 原子力発電炉の新増設には地元理解を含め相応のリードタイムが必要となります。今後デジタル化、AI化による経済成長に伴い電力需要は増大して行くものと考えられます。2040年代以降の電力安定供給の観点から新増設の建設に向けて早急に本腰を入れて取り組んでいく必要があります。原子力産業はサプライチェーンも含め懐は深いのですが、停滞環境下では原子力技術の維持、人材の継続的活用を図っていかなければ、原子力産業の基盤を維持できなくなり崩壊につながることになります。このためには原子力発電炉の建設を継続的に進めることが最善の策であり不可欠となります。

 このため、①新設炉、増設炉建設資金の確保策について具体策の提示が必要。民間資金のファイナンス環境の整備と公的信用補完制度における国の対応方針を明示し、このための必要資金を確保する。②国は2050年頃を目途として今後の新増設建設計画の策定を電気事業者に指示すると共に、事業者として計画実現に向けて解決が必要な事項のとりまとめを指示し、これを素案として国も参画して電気事業者、炉メーカーなどの原子力産業界代表、地方自治体代表などのメンバー構成でコンソーシアムを設置し計画実現方策を検討する。③これからの原子力発電炉の建設は、建設期間の長期化やコスト増が予測され、原子力産業の基盤や人材を維持するためには現実的かつ具体的な施策を国がリードして講じる必要があります。建設コスト低減のため例えば、今後の発電炉の形式と規模を統一することが一案として考えらます。また、原子力発電炉の建設に取組む電気事業者の実態を考慮すれば、原子炉建設の専門事業者を設立し電気事業者の判断でこれを活用できるようにすることも一案として考えられます。このような具体的な施策の検討が必要です。

(3) 高レベル放射性廃棄物最終処分に向けて取組みの加速
 原子力に対する国民理解を深めるためには高レベル放射性廃棄物の最終処分に対する取組みの具体的進展が求められています。2000年に最終処分に係る法律が制定され、事業主体の設立と処分地選定の受け入れを自治体から公募する方式となりました。以来25年経過してきましたが公募に応じ文献調査段階の対象自治体は3地域にとどまっています。設立された事業主体もこれまで相応の努力を積み重ねてきていることは事実ですが、このやり方を続けても最終処分地の選定は現状では全く見通しが立たないのが現実です。公募方式では地元首長にかける負担が大きく公募に応じる自治体が今後も増えることは考えにくいのが現実です。このため、法改正をして国の研究機関を動員し、日本の国土のなかで処分地としての適性が予測される地域を数か所選定し、地元の了解をベースとして国が自ら調査を実施する制度に改めることが必要と考えます。最終処分は国の責務と考え、国自らが事業主体となる考え方もあり、事業主体が現行の制度でよいのか、法改正にあたって今一度議論を深めるべきと考えます。

 以上のような意見に対し、対応方針を検討するよう事務方に指示して頂き、現実を直視し、国が責任を持って原子力政策の閉塞状況を打破していただくことを期待します。その上で総理の言葉で国民に語りかけて頂くとともに、総理と原子力発電所立地自治体の長との対話の機会も是非設けていただきたいものです。                                        敬具

令和7年11月12日                日本のエネルギ-を考える会(SEJ)